うにたもみいち
(演劇ライター)
「ゲンコツ」の拳で「ダン」と殴りかかってきそうな、力強くて容赦なさそうな、固有名詞の響き。
私はそこになにかしら石の如き意思の堅固さを感じる。
そのうえ今どき「世界一の喜劇」を標榜するに到っては、誇大的にして古代的ともいえる。
そもそもが実のところ、先鋭的とも前衛的とも呼びうる、相当に馬鹿げたナンセンス・コントを上演しているにも関わらず、
それを「諷刺喜劇」であると、敢えてアナクロニズムの規範に固執するほどであるのだからして、
かくも時代と添寝する事を断固拒絶し、独自の笑道を突き進んで来たのは、如何なる衝動によってであろうか。
なにせ、目指す先には、どんな聖杯が輝いているわけでもないのだし。
せいぜいが光り輝く「禿カツラ」の、宙に浮かぶばかりなのだし。
否、それどころか、この愚者どもにはゴールもなければ、見果てぬ夢さえないのだろう。
ならば、ただ岩石を山頂へと運び続けるシーシュボス的実存なのか。それもまた否。
そうではなく、山頂に運ばれてはすぐに転がり落ちてゆく岩石のほうこそ、げんこつ団の正体ではないか。
苔の生(む)すまで巌(いわお)となる細石(さざれいし)ではなく、苔を生じさせない転石のほうである。
たとえ知る人がいなくなろうとも、気儘に転がり続けるストーン。
左様に奔放に有り得るのも、「げんこつ団」が、異色にも、女性ばかしの団なればこそ、と思うは我が偏見であろうか。
そんな軽口を叩いていると、「ゲンコツ」の拳で「ダン」とお見舞いの一撃を喰らわされてしまうだろうか?